言葉の問題(メルロ=ポンティ)

・・・
作家の仕事は「思考」であるよりは、言語の仕事であるという性質をそなえている。作家は、その内的な仕組みにより、一つの経験の風景を再構成する記号のシ
ステムを作り出そうとする。この風景の力の線と起伏が、深みのある構文を誘い出し、構成と語りの様式を作り出し、これがふだん使われている言語と世界を破
壊し、作り直す。この新しい言葉はそれまでの長年の怠惰な生活のうちに、本人の知らぬ間に作家のうちに形成されている。この怠惰な生においては作家は、自
分には理念も文学的な「主題」もないことを残念に思っていたのであるが、ある日、自分のうちに少しずつ形成されていたこの「語り方」の重みに耐えかねたか
のように、作家は自分がどのようにして作家となったかを語ろうとし始め、作家の誕生を物語ることで、一つの作品を作り上げるのである。このように文学の言
語は、ある人が生きるために与えられた世界について語るものだが、同時にこれを文学の言語に変形させ、自らを固有の目的として与えるのである。プルースト
が、語ることや書くことが、一つの生き方になりうることを強調したのは、もっともなことである。・・・

(「メルロ=ポンティ・コレクション」より 訳:中山元 http://nakayama.org/polylogos/)

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